自然科学全分野 編集方針を大幅転換
一般からの投稿可能に
日本学士院(長倉三郎院長、以下学士院)が1921年から発行し続けている欧文紀要『Proceedings of the Japan Academy Series B Physical and Biological Scienes』が今、その姿を変えようとしている。同誌は、90年以上発行されている自然科学全分野を網羅する総合学術誌だが、あまり世に知られてた存在とはいえない。しかも日本の優秀な研究論文を英文にして紹介する、その意義は大きいとしても、学士院そのものが名だたる科学者の栄誉機関で、”雲の上”のような存在。悪く言えば第一線を退いた科学者の親睦団体、そんなところに投稿すること事態を考えもしない科学者がほとんどであろう。これを打破すべく、山川民夫東大名誉教授(生化学)の編集委員長就任を機に、ここ3、4年、大胆に編集方針を転換、より多くの科学者、特に若い科学者に研究成果の発表の場として投稿しやすくしていこうという。学士院の存在は大きいとはいえ、同誌が世界的な権威あるものとなりえるかは、日本の科学コミュニティにいかに認知されるかにかかっている。
国立情報学研究所(NII)は、文科省科学技術振興調整費により進めている新教育プログラム「サイエンスによる知的ものづくり教育」講座・トップエスイーの中から、ソフトウェア開発の技術リーダーとなるべきスーパーアーキテクトをこのほど輩出し、その教育効果を実証した。
トップエスイーは、科学技術振興調整費の新興分野人材養成・基盤的ソフトウェアの支援を受けて、日本のソフトウェア開発力アップと国際競争力強化のため、NIIが開発した新教育プログラムである。プロジェクト期間は、平成16年度から5年間。
CIO育成の必要性討議
日本の情報化投資の遅れ指摘
企業や行政機関など組織全体の情報を統括する要として、CIO(最高情報統括責任者)を設置する機関が増えているが、昨年発足した国際CIO学会(会長=小尾敏夫・早大大学院教授)は「2006年度全国大会」を3月23日に早稲田大学で開催した。午前中に分科会毎の研究発表を、また午後には講演会を実施した。講演会場となった、定員220名の小野記念講堂は立ち見も出るほど盛況だった。多岐にわたるICT分野の有識者が講演やパネル討論を行い、日本のイノベーションを実現するツールとしてICTが一層重要性を増し、CIOなど高度なICT人材の育成が急務なこと、米国に比べ日本の情報化投資の遅れが心配なこと等が強調された。
文科省 警察庁
研究開発推進会議設置 4月中初会合
文部科学省と警察庁は、テロ・犯罪対策のための研究開発推進会議(局長級)を設置し、4月中にも初会合を開く。テロや犯罪は、年々、高度化・巧妙化しており、その対策には高度な科学技術が不可欠となっている。一方、大学等の先端的な研究成果は、テロ・犯罪対策に貢献する可能性があるものの、現場にはなかなか結びついていない。そうしたニーズとシーズを結びつけていくための方策を検討する。
セラ材料中心に技術開発
産業技術総合研究所と名古屋工業大学は、産学連携により地域産業への貢献や人材育成を進めるため、連携・協力協定を締結した。3月27日に産総研東京本部理事長室で、吉川弘之・産総研理事長(写真右)と松井信行・名工大学長(写真左)が調印した。
科学技術政策研がシンポ
科学技術と社会つなぐ
文部科学省科学技術政策研究所は4月13日、シンポジウム「科学技術と社会をつなぐ〜ナイスステップな研究者2006からのメッセージ」を日本科学未来館イノベーションホール(江東区青海2−41)で開催する。広く一般の参加を歓迎するという。参加は無料。
新たな原因遺伝子[GDF5]
理研、南京大など共同で発見
理化学研究所・遺伝子多型研究センター変形性関節症関連遺伝子研究チームの池川志郎チームリーダーと宮本恵成研究員らは、中国・南京大学などと共同で、『GDF5遺伝子』が、変形性関節症(OA)の原因遺伝子の1つであることを発見した。
ジャガイモ新品種誕生
「さやあかね」
北海道立北見農業試験場作物研究部馬鈴しょ科の池谷聡研究職員、千田圭一科長らの研究グループは、ジャガイモ疫病(Phytophthora infestans)とジャガイモシストセンチュウの抵抗性を併せ持つジャガイモ品種「さやあかね」を発表した。ほぼ無農薬栽培が可能で、普及すれば安全で低コストな馬鈴薯生産が可能になる。市場に出回るのは09年が予定されている。この成果は3月30・31日に茨木大学で行われた、日本育種学会第111回講演会で発表された。
アビリット 美容用小型MR装置
小川脳機能研の指導で開発
パチスロ遊技機や医療環境機器等の製造・販売を行うアビリット(本社=大阪市中央区南船場、濱野雅弘社長)は、美容分野向けの「小型MR(磁気共鳴)装置」を(財)濱野生命科学研究財団小川脳機能研究所の指導で開発した。今後は、同装置を活用してくれる研究機関・企業等に貸し出し、商品化に向けて装置の有効性を示すデータの蓄積をはかっていく計画だ。
解き明かされてきた宇宙の進化
日本天文学会は2007年春季年会を3月28日から30日まで、東海大学湘南校舎(神奈川県平塚市)で開催した。最新の研究成果628件の発表や、2006年度の天文学会各賞の表彰式が行われた。
赤外線天文衛星『あかり』などの最新の観測手段で得られた成果が注目を集めていた。一方、以前から日本が持っていた望遠鏡などでも注目を浴びる成果が生まれており、観測手段の発展だけでなく観測手法の改良や地道な観測そのものの重要性を再認識させた。
さらに中学生・高校生による研究発表(ジュニアセッション)40件、小柴昌俊氏などを迎えた公開講演会『ミクロとマクロの宇宙の不思議―地下にもぐって宇宙を観る』も開催した。
各賞受賞者の業績紹介
日本数学会は3月27日〜30日、埼玉大学で2007年春の年会を開催した。今回の年会では、中西賢次・京都大学大学院理学研究科助教授に数学会賞春季賞を、坂内英一・九州大学数理学研究院教授と吉岡康太・神戸大学理学部教授に代数学賞を授与した。さらに数学会賞関孝和賞が、フランス高等科学研究所に授与されることが決まったが、授賞式は秋の年会で行う。また数学会賞出版賞として5件が選ばれた。
科学技術偏重に疑問の声
米国、インドの大学長報告から
大学・大学院教育の”グローバル化”が加速している。これまで既に国際合弁の科学技術大学の実態や、日本の技術大学とベトナムのハノイ工科大学の連携などの動きを報じてきたが、米国の外交問題専門誌『フォーリン・アフェアーズ』は、最新号でこの傾向をジョンズ・ホプキンズ大学のウィリアム・ブローディ学長による分析をもとに大きく取り上げた。
一方、IT産業の発達が著しいインドでは、インド工科大学(IIT)が、日本の幾つかの大学と連合体(コンソーシアム)を発足させることを検討中だ。ただ、このグローバル化が科学技術研究と教育を重視するあまり、人文系の学部を”犠牲”にしていることを憂慮する向きも少なくない。たとえばこのほど来日したIITのサンジャイ・ダンデ学長は、「理工系と人文系のバランスを取ることが大切です」と、日本外国特派員協会で本紙に語った。
被害学会の記録もとに
次号から連載開始
04年7月3日の読売新聞1面トップに、日本の学会関係者を驚愕させるスクープ記事が載った。(財)日本学会事務センター(以下「学会事務センター」とする)が約300に及ぶ学会からの委託金を不正流用し、負債総額約30億円に達して経営破綻状態にあることが判明したというショッキングな事件で、大きな社会問題に発展した。
昔から中小学会の多くは、その事務を会長または幹事を務める学者の研究室が担っていた。それが70年代前後の大学紛争で閉め出されたので、東大出版会が関係し、数百の学会の権威等が名を連ね、財団法人として学会事務センターを71年に発足させた。以来、その運営は数名の常務理事によって行われてきた。
その他の非常勤理事は、日本の学会を代表する学者で構成している。破綻時の役員メンバーを見ても、会長は元文部次官の木田宏氏、理事長は日本農学会会長・東大名誉教授の光岡知足氏、副理事長は阪大名誉教授の熊谷信昭氏、理事に元阪大総長の岸本忠三氏、元京大総長の長尾真氏、慶応大名誉教授柳井浩氏他6人の学者、監事に2名の東大名誉教授、評議員に元藤沢薬品の青木社長、河合隼雄京大名誉教授他3名といった錚々たるメンバーだ。 そうした日本の学会の重鎮達が関わる学会事務センターは、本来厳格で高潔な組織であるべきだが、今回の経営破綻の原因については、その後の調べで事務局を預かる常勤理事等の公私混同、巨額資金の流用や放漫経営によるものだと判明した。
結局、04年には東京地裁から保全管理命令が発令され、整理が進められて学会事務センターは破産に至った。この破産によって、数百の学協会の会員多数から振り込まれ、学会事務センターの会計が一括して預かっていた現金が回収不能に陥り、業務や財政上の被害を被る結果となり、社会的な大問題となった。
被害を受けた学会等からの追及で、非常勤の木田会長、光岡理事長は多額の個人資産を提供することとなり、他の学者理事も応分の私財提供を余儀なくされて、事件は最近ようやく終結した。
しかし、悪事には無関係だった木田氏は心労で死去。光岡氏も体調が悪化し、理事などを務めた他の学者の方々達も金銭的精神的被害を受け、何とも痛ましい結末となった。
日本の学会史上では初の大規模不祥事であり、国会でまで取り上げられるなど、正に政官学を揺るがせた大事件であった。日本の学会の大半では会長、理事長、理事といった役員の要職を学者が占めている。しかし不祥事が発生すると、名前だけの非常勤であっても、民法により法的責任が役員には生じる。学会事務センター以外にも、小規模な学会不祥事は他にも起きており、いずれも非常勤理事が責任をとっている。
そこで、本紙では学会事務センター事件を範として、日本の学術界が二度と同じような轍を踏まないためにも、この事件を風化させ埋もれさせてしまうことのないように、事件の経緯を紙面で取り上げ報道することにした。
被害を受けた各学会は集結し、破産被害学会連絡協議会を結成して事件への対応に当たったが、幸いなことに、その過程で明らかにしてきた事件の経緯等を事務局が記録に残している。
そこで本紙では、破産被害学会連絡協議会事務局長を務めた、滋賀県立大学の倉茂好匡氏が取りまとめた事件の経緯をもとにして、学会事務センター破綻の顛末を次号より連載する。